委託販売のしくみ・会計処理・仕訳例をわかりやすく

公開日:2022年02月28日
最終更新日:2024年03月16日

この記事のポイント

  • 委託販売とは、受託者に商品を積送し販売してもらい、手数料を支払う形態の商品販売のこと。
  • 委託販売は、原則として受託者販売時の販売基準によって売上高を計上する。
  • 委託販売においては、継続して適用することを条件に「仕切精算書到達日基準」が認められている。

 

委託販売とは、商品の販売を第三者(受託者)に依頼する商品販売の形態です。
委託販売では、原則として受託者が販売したときに売上高を計上する「販売基準」で計上しますが、継続的に適用することを要件として「仕切精算書到達日基準」が認められています。
 

委託販売の豆知識

委託販売とは、商品または製品の販売を受託者に委託して、委託商品(製品)に関する収益または費用の計算を委託者自身に帰属する販売形態です。
自己の営業所がないエリアでの販売などが可能となり、売上増加が可能となるなどのメリットがあります。
販売委託のために積送されたものを「積送品」といい、手元商品と区別しなければなりません。
委託販売は、一般的な売上計上基準を適用すると実態が正確に反映されないことから、特有の会計処理を行なわなければならず、受託者から入手する仕切精算書に基づいて会計処理を行わなければなりません。
したがって、適切な処理を行うためにも経理作業を効率化するためにも、早めに税理士に相談して経理システムの構築についてサポートを受けることをおすすめします。

委託販売とは

委託販売とは、商品の販売を第三者(受託者)に依頼し、受託者が顧客に販売し、手数料を支払う商品販売形態です。
委託品は受託者の手元にありますが、所有権は委託者が保有しています。
受託者が販売しないで所有している商品は「積送品」と呼ばれます。
「積送品」は、委託者の貸借対照表に計上されます。

(1)委託販売と試用販売の違い

委託販売は受託者に販売を委託する商品販売の形態ですが、試用販売は相手に商品を送って一定期間試用してもらってから、商品を購入するかどうか決めてもらう販売形態のことで、受託者は介在しません。
委託販売や試用販売のほか、予約販売、割賦販売を「特殊商品販売」といい、特殊商品販売については一般的な売上計上基準ではなく、特有の会計処理を行います。

販売形態 内容 収益計上基準
委託販売 商品の販売を第三者に委託して商品を送り、手数料を支払う販売形態。 受託者が委託品を販売した日をもって収益計上する。継続適用を条件に「仕切精算書到達日基準」も認められる。
試用販売 相手方に商品を送り、一定期間試用してもらい、そのうえで商品を購入するかどうか決定してもらう販売形態。 買主の買取意思表示が必要で、買主が買取の意思表示を行った時点で収益を計上する。
予約販売 あらかじめ顧客から購入の意思表示を受けたうえで、商品の一部または全部を受取り、後日商品の引渡しを行う販売形態。 予約金を受け取っても収益を計上せず、引き渡したときに収益を計上する。
割賦販売 商品は先に引渡し、分割払いで代金を回収する販売形態。 通常の販売収益と同様に販売基準が適用される。

(2)委託販売のしくみ

委託販売は、委託者が受託者に商品の販売を委託する販売形態です。
委託者は、①受託者に商品を積送し、②受託者は顧客に商品を販売します。③受託者は顧客に商品を販売後、「仕切精算書(売上報告書)」を送付します。④委託者は受託者に対して、手数料を支払います。

①委託者→受託者「商品積送」
②受託者→顧客「商品販売」
③受託者→委託者「仕切精算書」の送付
④委託者→受託者「手数料の支払い」

(3)委託販売のメリット

委託販売は、自社で店舗を持つ必要がありませんし、自社で販売するより販売機会が増えるというメリットがあります。また、受託者は販売のプロであることから、自社で販売を行うより効率的かつ効果的に販売を行ってもらえることが期待できます。
また受託者が人気店であれば、多くの顧客に自社商品を知ってもらうことができます。

(4)委託販売のデメリット

多くのメリットがある委託販売ですが、一方で注意すべき点もあります。
委託販売においては、受託者が販売できない場合にはそれが委託者の損失となってしまいます。したがって委託販売では、受託者を十分に確認し信頼できる業者に委託することが大切です。

さらに、委託者は直接売上計上や積送品の在庫管理を行いませんから、受託者に適切に管理してもらうよう指示を行うことが必要です。
受託者が顧客から回収した代金は、委託者にもれなく入金されるようになっているシステムが整備されていることはもちろん、売上の計上もれ、在庫の計上もれがないように管理してもらわなければなりません。
不良品や滞留品についても把握するために、受託者の販売状況について随時報告を受けるシステムが整備されていることも大切です。

(5)委託販売の収益計上時期

委託販売においては、原則として受託者が販売したときに売上を計上する「販売基準」によって収益を計上します。
つまり、商品を受託者に積送した時点ではなく、受託者が委託品を顧客に販売した日が収益計上時期とされます。
ただし、売上のたびに売上計算書が作成され送付されているときには、「仕切精算書到着日基準」も認められています。「仕切精算書到着日基準」は、仕切精算書の到達日の属する事業年度の益金に算入するもので、仕切精算書が販売のたびに送られてくることおよび継続適用することが条件です。
節税対策の観点からいえば、売上計上はなるべく先延ばしする方がよいので「仕切精算書到着日基準」を採用する方がよいでしょう。

委託販売の仕訳例

委託販売においては、①商品を送付したとき、②商品を販売したとき、③代金を回収したときに処理仕訳を行います。

(1)委託商品を送付した

商品100万円分について受託者に送付して販売を委託した。

借方 貸方
積送品 1,000,000 商品 1,000,000

「積送品」とは、第三者が保有する商品について自己の手元にある一般の商品と区別するために使用される勘定科目です。
※実務上は、検収基準で売上計上される商品製品について、工場や倉庫から出荷されてトラックで積送中のものをいうこともあります。

(2)委託商品が販売された

商品100万円分のうち60万円分について、受託者が顧客に143万円で販売したと報告された。

借方 貸方
売掛金 1,430,000 売上高 1,300,000
仮受消費税等 130,000
借方 貸方
売上原価 600,000 積送品 600,000

(3)委託商品の代金を回収した

商品100万円を受託者に送付し、商品のうち60万円が132万円で売れたと報告され、受託者から販売手数料5%が差し引かれて、入金された。
※販売手数料:66,000円

借方 貸方
普通預金 1,254,000 売掛金 1,320,000
販売手数料 60,000
仮払消費税等 6,000

まとめ

委託販売は、一般的な売上計上基準を適用すると実態が正確に反映されないため、特有の会計処理を行います。
委託者は受託者の販売状況について、その都度確認することは実務上困難であることから、「仕切精算書」が受託者から送付され、委託者のもとに到達した日を売上計上することも認められています。
「仕切精算書到達日基準」を採用する方が、実務上も節税の観点からもメリットは大きいといえるでしょう。

委託販売について相談する

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

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アトラス総合事務所

会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!

委託販売とは、委託者が受託者に自己の商品・製品を預けて販売を依頼するという販売方法です。
委託販売は自己の営業所がないエリアでの販売など、受託者の販売力を利用して売上を増加させることができるなどのメリットがある販売方法ですが、企業会計上は委託商品を手元商品と区別するために「積送品」と呼び、委託販売の結果は受託者から入手する仕切計算書に基づいて会計処理をしなければならないといった注意点もあります。
アトラス総合事務所は、税務から労務、法務まで、法人・個人事業経営を総合サポートしております。委託販売の注意点や会計処理についても、ていねいにご教示いたします。インターネットを使った遠隔サポートにも対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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