公開日:2022年11月18日
最終更新日:2024年06月25日
会社を設立するときには、資本金が必要です。
会社法の施行によって、資本金は1円でも会社を設立することができるようになりましたが、資本金は事業資金となるものですから、経営に取り組むうえで必要な額の資本金を用意するのが、現実的です。
しかし、だからと言って資本金の額が大きすぎると、設立後の納税額に影響してしまうことがあります。
したがって資本金の額は、「事業資金として、当面いくらくらい必要か」ということと「資本金の額によって、納税額がどう変わるか」ということを理解しておくことが大切です。
資本金の豆知識
会社設立時の資本金は、事業をスタートするための元手となりものです。資本金は、会社設立時には、当面の必要資金がどれくらいになるかを計算し、その金額を準備しておくことが大切です。また、1,000万円と1億円のラインにも注意します。例えば、資本金が1,000万円を超えると、住民税の均等割の額が高くなります。
また、資本金のほか事業年度などについても決めなければなりませんが、資本金1,000万円未満の会社で消費税メリットを最大限活かしたいなら、設立日からなるべく長く12カ月後に決算期となるよう設定するのがおすすめです。
ただし、設立1年目から売上が見込めるなどの場合は、設立の日から7カ月目に決算がくるように設定するのがおすすめです。また、インボイス制度導入にあたり適格請求書発行事業者となった方がメリットが大きい場合には、課税事業者となった方がよいこともあります。
いずれにせよ、資本金の額や事業年度の決め方で、会社設立後の納税額が大きく変わることがありますので、早めに税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
会社法施行により、資本金1円の会社でも設立することができるようになりました。しかし、現実的に1円で事業をスタートさせることはできませんし、取引先が登記簿で会社の資本金の額を確認することもあります。また、創業融資を受ける際には、資本金の額で借入の限度額が決まります。
したがって、会社の必要資金相当額を資本金としておく方がよいでしょう。
会社設立時の資本金は、事業をスタートするための元手となるものです。いったん会社に出資をしたら、そのお金の所有権は会社に移ります。つまり、会社の口座から勝手におろして、個人的に使用することができなくなります。
資本金とは、会社が株式の発行によって株主から払込みを受けた金額のうち、資本金として計上された金額のことです。会社は、株式発行によって払い込まれた金額のうちの2分の1以上を、資本金として計上しなければならず、残額は資本準備金として計上されます。 資本金額は、登記しなければならず、登記の手数料が資本金額に比例するため、実務上は、払い込み金額の2分の1を資本金とする会社も多く存在します。 |
資本金は、事業を行ううえでの元手となるものですから、会社の当面の必要資金がどれくらいになるかを計算し、その金額を準備しておく必要があります。
目安としては、開業に必要な設備資金や家賃・光熱費、仕入代金などを支払うための運転資金や、事業を軌道に乗せられるまでどの程度の資金が必要なのかを計算し、その金額から金融機関等から借りられる金額をマイナスした金額と見ておくとよいでしょう。
①会社を設立するうえで必要となる設立費用、家賃、光熱費、仕入代金、外注費、交通費や通信費などの運転資金 ②事業が軌道に乗るまでに必要となる資金(生活費も含む) ③金融機関などから借り入れられる金額 ① + ② - ③ = 資本金として用意すべき金額 |
また、資本金の額が許認可の条件となっていることもあります。
たとえば、人材派遣業は2,000万円の資本金が必要ですし、人材紹介業や建設業は500万円の資本金が必要です。
資本金の額を決める時に、もうひとつ注意したいのが、1,000万円と1億円のラインです。
たとえば、資本金等が1,000万円超だと住民税の均等割の額が高くなりますし、1億円を超えると交際費の損金算入できない金額があるなどの理由から、納税額に影響するからです。
したがって、資本金の額はこのラインに注意し、業種規模や自社の状況に合った適当な金額を決める必要があります。
資本金1,000万円以下の主なメリット ・法人住民税の均等割が安くなる。 ・資本金1,000万円未満は、消費税が免税される(新設法人の特例)。 資本金1億円以下の主なメリット |
まずは、資本金の額1,000万円のラインです。
このラインは、主に法人住民税の均等割と消費税の納税義務についての影響があります。
資本金の額が1,000万円以下か1,000万円を超えるかで迷っている場合には、会社設立後の税金のことを考え、1,000万円を超えないようにすることをおすすめします。
なお、均等割と消費税では、下記のとおり判定ラインが若干異なっていますので、その点には注意が必要です。
種類 | 判定基準 | 判定ライン | 判定の日 |
法人住民税 の均等割 |
資本金等の額 (資本準備金なども含む) |
1,000万円超 1,000万円以下 |
事業年度終了の日 |
消費税の納税義務 | 資本金の額 | 1,000万円以上 1,000万円未満 |
事業年度開始の日 |
個人事業主と異なり、会社を設立した場合には、赤字でも納税する法人住民税の均等割という税金があります。この税額は、市区町村ごとに資本金の額や従業員数などによって変わりますが、どんなに赤字でも最低7万円が毎年課税されます。
法人住民税の均等割は、設立時であれば資本金等の額と従業員数で税額が変わります。
事業年度終了時の資本金等の額が1,000万円以下であれば、最低額の7万円で済みます。
道府県民税(標準税率)
市町村民税(標準税率)
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消費税の納税義務は、原則として基準期間の売上高(消費税の課税対象となる売上高)が1,000万円超になったら生じます。
設立したばかりで、この「基準期間」がない会社は、原則として会社設立後の第1期・第2期は消費税を納税する必要がありません。
そして、2期前つまり第1期の課税売上高が1,000万円を超えた場合に、消費税の納税義務者となります。
ただし、設立時の資本金の額が1,000万円以上の会社は、第1期から消費税の納税義務者となります。
したがって、消費税の免税メリットを享受するためには、設立時の資本金の額は1,000万円未満とすることをおすすめします。
資本金の額を検討する際の、もうひとつのラインが1億円です。
資本金の額が1億円以下の会社は、税務上「中小企業」と位置付けられ、多くの優遇措置を受けることができます。
ただし、親会社の資本金の額が5億円以上で、その親会社が株式を100%保有する完全子会社を設立した場合には、その子会社は、実質上は中小企業とはみなされず、これらの優遇措置の適用が制限されますので、その点については注意が必要です。
法人事業税は、期末の資本金が1億円を基準として課税方法が大きく異なります。税金の課税対象を課税標準といいますが、資本金1億円以下の法人の場合には、法人事業税の課税標準は、原則として法人税と同じ所得金額となります(特定の業種をのぞく)。
しかし、資本金が1億円を超えると、課税標準としてこの所得に「付加価値額」と「資本金等の額」が加えられます。
このように、所得以外がベースとなって行われる課税を「外形標準課税」といいます。
つまり、資本金が1億円以下の法人は法人事業税の外形標準課税の適用外となりますが、資本金1億円超の法人は、外形標準課税の適用対象となり、課税標準として「所得」に「付加価値額」と「資本金等の額」が加えられることから、納税額が大きく変わることになります。
▶ 法人事業税とは|税率・計算方法は?法人税・法人住民税との違いは?
法人税の税率は、所得税のような「超過累進税率(所得が高くなると高い税率が用いられる)」ではなく、法人の形態や規模、所得の金額などに応じて一定の比例税率が採用されています。
比例税率とは、課税標準の大小に関係なく一定割合を用いる税率で、法人の種類や資本金の額について異なり、公益法人等の所得は非課税です。また、資本金または出資金の額が1億円以下は「中小法人」に分類され、年800万円以下の所得金額から成る部分の金額については、軽減税率が適用されます。
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10万円以上の固定資産は、原則として減価償却によって毎期費用化しなければなりません。ただし、例外的にもっと短期間で償却できる方法があります。
①少額減価償却資産
資本金または出資金の額が1億円以下の「中小企業者等」については、30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、300万円を限度として全額を損金算入することが認められています。これを「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入」といいます。
②一括償却資産
20万円未満の固定資産を、一括償却資産といって税務上3年間で損金とすることができます。
取得価額 | 中小企業者等 | 中小企業者等以外の法人 |
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30万円以上 | 通常の減価償却 | 通常の減価償却 |
30万円未満20万円以上 | 300万円を限度として全額損金算入 | |
20万円未満10万円以上 | 一括償却(3年間定額償却)可能または300万円を限度として全額損金算入 | 一括償却(3年間定額償却)可能 |
10万円未満 | 消耗品費等として全額損金算入可能 |
上記のとおり、中小企業者等は、30万円未満の固定資産については、一括償却資産や少額減価償却資産として処理することができるため、通常の償却よりも損金とすることができるタイミングが早くなり、おトクとなります。
法人税では、政府が促進したい特定の政策について、税制措置で優遇される制度が多々設けられています。
たとえば、研究開発税制では、最大で法人税額が50%も税額控除することが可能となりますし、中小企業投資促進税制では、中小企業者等が機械等を取得した場合には、法人税額の20%を限度として、取得価額の7%相当額を法人税額から控除することができます。
参照:国税庁「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」
このように法人税を直接少なくすることができる税額控除は、期間限定で制定される租税特別措置法に基づくものが多いため、タイムリーな情報をキャッチすることが大切です。
交際費とは、交際費、接待費などの費用で、会社が取引先など事業に関係のある者等に対する接待や慰安などの行為のために支出するもの(1人当たり5000円以下の一定の飲食費などは除く)をいいます。
交際費は、会社の資本金によって損金となる金額が異なります。
資本金1億円超100億円以下の会社が支出する交際費については、50%を超える金額は経費と認められませんし、資本金等の額が100億円超の会社が支出する交際費等の額は、一切損金に算入することができません。
しかし、資本金1億円以下の会社については、一定金額の交際費が認められており、飲食のための支出(社内接待費を除く)の50%と定額控除限度額(年800万円)を選択して適用され、それを超える部分の金額は、損金とすることができないとされています。
なお、いずれの場合も「5,000円以下の交際費」は、損金とすることができます。5,000円以下の交際費と認められるためには、以下を記載した書類が必要となります。
①飲食等の年月日 ②飲食等に参加した取引先など事業に関係ある者の氏名または名称、関係 ③飲食等に参加した者の数 ④その費用の金額並びに飲食店等の名称および所在地 ⑤その他参考となるべき事項 |
手間はかかりますが、5,000円以下の交際費を区分することで、損金不算入となる金額を減らすことができるので、節税効果が期待できます。
欠損金の繰戻還付とは、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に、欠損金額が生じた場合に、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税の還付を請求することができるという制度です。
たとえば、前期1,000万円の課税所得があり法人税を150万円支払ったが、当期1,000万円の欠損金額が出たときには、前期支払った150万円の法人税の還付を受けることができるということです。この欠損金の繰戻還付は、資本金1億円以下の法人のみが受けることができ、資本金1億円超の法人の場合は、受けることができません。
会社を設立する際には、資本金の額を決める必要があります。
会社設立時の資本金・出資金の額は、設立時の自己資金であり、対外的な信用を得るためにも、ある程度は大きい方が良いですが、資本金の額が多いと税務上不利に取り扱われることがあります。
とくに1,000万円を超えるラインと1億円を超えるラインの取り扱いの違いは、非常に重要です。
したがって、このラインに注意して会社の実情に合った資本金の額を決定することが大切です。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修者
アトラス総合事務所
会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!
資本金とは、出資者から集めた元手で、資本金を提供する人を出資者といいます。上場会社では、将来の儲けのために出資されるケースがほとんどですが、会社設立時の資本金は、事業の当面の元手としての意味合いが強いため、事業を開始してから一定期間、いくらいの設備資金や運転資金がかかるかを検討したうえで、資本金を決めます。資本金の額は、税金面や資金調達、許認可など会社設立後の事業そのものに関わってきます。とくに会社設立時の税金負担は、資金繰りにも影響を及ぼします。
したがって、資本金の額を決める際には、本当にその額が必要であるかどうかを慎重に検討して決めることが大切です。
アトラス総合事務所では、会社設立時の資本金や事業年度の決め方や必要な手続きはもちろん、設立後の適切な節税対策についても、ていねいにご説明しアドバイスを行います。お気軽にお問い合わせください。