公開日:2019年10月26日
最終更新日:2024年01月16日
確定申告は、すべての人が行う手続きではありません。
確定申告は必ずしなければならない「確定申告の対象者」と、必ず確定申告をしなければならないわけではなくても、申告することで税金が戻ってくる人がいます。
この記事では、確定申告をしなければならない「確定申告の対象者」と、確定申告をする必要はなくても、申告することで税金が戻ってくる人についてご紹介します。
確定申告の意味や内容を理解しながら、自分が確定申告の対象者であるのか、対象者である場合にはどのような手続きが必要なのかについて理解しましょう。
確定申告の豆知識
個人事業主や不動産オーナーは確定申告は必須ですが、サラリーマンでも会社からの給与が2,000万円以上ある人や、副業による稼ぎが経費を引いて20万円を超えた人などは確定申告が必要です。
なお、確定申告の義務はないものの「年末調整で申告できなかった控除がある」「退職金をもらったが一定の申告書を提出してない」などの事情がある人は、確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性があります。
確定申告をすることで税金が戻るケースは案外多いのですが、それを知らないために税金を納め過ぎている人はたくさんいます。「確定申告する義務があるのか」「確定申告した方がトクするのか」分からない人は、早めに税理士に相談して、必要な書類や手続きなどについてアドバイスを受けることをおすすめします。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に所得があった人が、所得税を「申告納税」または所得税を納め過ぎている場合には「還付申告」することをいいます。
所得税とは
所得税とは、個人の所得に対して国がかける税金のことです。その人の1年間のすべての所得から、各種所得控除を差し引いた残りの「課税所得金額」に所定の税率を適用して税額を決定します。
所得税の計算方法
所得税の税率は、所得が多ければ多いほど税金が高くなる累進課税制となっています。
所得が195万円以下であれば、所得税率は5%ですが、所得が4,000万円を超えると、税率は45%(但し、4,796,000円が差し引かれ残りが所得税額となります)となります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
①収入-必要経費=所得 ②所得-所得控除=課税所得金額 ③課税所得金額×税率-控除額=基準所得税額 ※税率、控除額は、所得金額によって異なります ④基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額 ⑤③+④=所得税・復興特別所得税額 |
確定申告書の提出
申告をする場合には、内容によって源泉徴収票や控除証明書、領収書などの申告書以外の書類が必要です。また、住宅ローン控除を受ける場合には、登記事項証明書や住宅ローンの年末残高証明書など自ら取り寄せなければならない書類もあります。
確定申告書を作成し必要書類を準備したら、管轄の税務署に提出します。
通常の確定申告の提出期間は、例年2月16日から3月15日です。
確定申告は、必ずしなければならない人と、確定申告する必要はなくても申告することで税金が戻ってくる人がいます。
サラリーマンは、通常給与やボーナスから所得税が源泉徴収され、年末調整が行われていますから、すでに税金が精算されているので基本的に確定申告の必要はありませんが、一定のケースに該当する場合には確定申告が必要です。
また、個人で事業を営んでいる人やフリーランスの人は原則として確定申告が必要ですし、年金をもらっている人、仮想通貨などで取引をしている人も確定申告をしなければならない場合もあります。
サラリーマンで確定申告をしなければならない人 ①給与以外の所得が20万円を超える人 ②2カ所以上の会社から給与や賞与の支払いを受けている人 ③その年中に支払いを受ける給与や賞与の収入金額が2,000万円を超える人 ④同族会社の役員などで、そこからの給料の他に貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料などがある人 ⑤災害によって被害を受け、災害減免法の規定によって源泉徴収の猶予または還付を受けた人 ⑥源泉徴収の規定が適用されない給与や賞与の支払いを受けている人 |
年金をもらっている人で確定申告をしなければならない人 公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある人 ※ただし、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合には、所得税等の確定申告は必要ありません。 |
サラリーマンは、通常給与やボーナスから所得税が源泉徴収され、年末調整が行われていてすでに税金が精算されているので、基本的に確定申告の必要はありません。しかし、副業による収入が一定以上ある場合や、2カ所以上の会社から給与を得ている人などは、確定申告が必要です。
年収2,000万円超の給与をもらっている人は、会社で年末調整を行えないので、自分で確定申告をする必要があります。
年収2,000万円超の人が会社から配布される「給与所得の源泉徴収票」は、年末調整されないため、「給与所得控除後の金額」の欄と「所得控除の額の合計額」の欄が空白になっています。
年末調整で行う社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除などの計算もされていないので、確定申告で所得控除を行います。
2カ所以上の会社から給与をもらった人は、すべての収入について確定申告をしなければなりません。ただし、アルバイト収入などが20万円以下の場合には、確定申告をする必要はありません。
給与以外の収入は、大別して給与所得と雑所得に区分されます。
給与所得は、給与所得の源泉徴収票が送られていきます。雑所得(原稿料など)は、支払調書が送られてきます。送られてきた書類によって、所得の区分を確認します。
なお、勤務先の会社で年末調整が済んでいる場合には、扶養控除などの所得控除の計算を改めて行う必要はありません。
副業による所得が20万円以下の場合には、確定申告をする必要はありません。
しかし、収入から必要経費を除いた所得が20万円を超えた場合には、確定申告が必要です。たとえば、原稿を書くための書籍を購入したり取材に出向くために交通費を使ったりした場合には、これらの費用は必要経費と認められます。
これらの必要経費を差し引いた所得が20万円以下なら、確定申告をする必要はありませんので、こまめに領収書やレシートをもらっておきましょう。
なお、副業として複数の支払先から収入を得ている人は、すべての支払先から支払調書をもらう必要があります。基本的には1月中に前年に支払われた金額が合計された支払調書が送られてくるはずです。もし、1月中に支払調書が届かない場合には、支払先に問い合わせをしてみましょう。
同族会社の役員などをしていて、会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を得ている人は、それらの所得金額が20万円以下であっても確定申告が必要です。また、その役員と特殊な関係にある人(役員の親族または親族であった人など)の場合も同様に確定申告が必要です。
確定申告をする必要がない場合でも、確定申告をした方がお得になるケースもあります。たとえば、1年間の医療費が10万円を超えた場合には医療費控除を受けることができますし、2,000円を超える寄附をした場合には、寄附金控除を受けることができます。
また、配偶者と離婚または死別した場合には、寡婦控除かひとり親控除を受けることができますし、災害や盗難に遭った場合には、雑損控除を受けることができます。
医療費控除、寄附金控除、雑損控除は、会社で年末調整が行われませんので、該当する場合には自分で確定申告を行わなければなりません。確定申告をすることで、払いすぎた税金が戻ってきます。
また、ローンを組んでマイホームを購入・増築した人や、バリアフリーや省エネ、耐震に関わる改修工事をした人、マイホームを売却して譲渡損があった人も確定申告をすることで納め過ぎた税金が戻ってくることがあります。
それ以外でも、確定申告をすることで税金が戻ってくるケースは多々あります。税理士に相談して、還付金が戻るかどうかよく確認してください。
退職金をもらった人で、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している人は、原則として確定申告をする必要はありません。しかし、この申告書を提出していない場合には確定申告をすることで還付金を受けることができます。
また、年度の途中で退職した人は、還付金を受けとれる場合があります。
年の途中で退職して再就職していない人は、年末調整を受けていないので確定申告をする必要がありますし、会社を退職して年金をもらっている人でも一定のケースに該当する場合には確定申告が必要です。
たとえば、定年や自己都合退職、リストラ、結婚などの理由で、年の途中で退職している場合には、年末調整を受けていませんので確定申告をした方が得することになります。
在職中にすでに給与から源泉徴収されている所得税は、「1年間働いた場合」という見込みの収入をもとに課税されています。したがって、もし年の途中で会社を退職してその後無収入である場合には、その年の収入は見込みよりも少なくなりますから、納めるべき税金の額も低くなります。
つまり、年の途中で退職した場合には税金を納め過ぎている可能性が高く、確定申告をすれば、納め過ぎた所得税が還付される可能性が高いのです。
さらに、もし確定申告をしないと翌年の住民税額にも影響してしまいます。住民税は、所得を基準として計算されているからです。
年の途中で退職してその後再就職せず無収入の場合には、忘れずに確定申告をするようにしましょう。
定年や自主退職などで退職金をもらった場合には、その所得は「退職所得」として所得税の課税対象となります。他にも社会保険などから退職する時に支給される一時金や、生命保険会社から受け取る退職一時金も同様に「退職所得」となります。
退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社で所得税と住民税を差し引いてくれているので確定申告をする必要はありません。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合には、支払われた退職金から所得税が多く差し引かれているため、税金を払い過ぎてしまっている可能性が高くなります。この場合には、確定申告をすることで還付されることになりますので、忘れずに確定申告をしてください。
年金をもらいながら仕事をしている人は、給与所得と合算して確定申告をする必要があります。確定申告が義務づけられているのは、公的年金の収入金額が年間400万円超もしくは年間400万円以下であっても、アルバイトなどの所得の合計が年間20万円超の場合です。
なお、上記の要件に該当せず確定申告をする必要がなくても、社会保険料などを自分で支払っている場合には、確定申告により控除を受けることができるので、確定申告をすることで納め過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。
個人で事業を営んでいる人や、フリーランスで働いている人は必ず確定申告をしなければなりません。
事業にはいろいろな種類がありますが、個人事業主の所得は原則として事業所得です。ただし、アパートや駐車場の賃料収入については、事業所得ではなく不動産所得になります。
個人事業主が確定申告をする際には、青色申告がおすすめです。
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告の方が65万円の特別控除(※令和2年分より現行の65万円の青色申告特別控除の適用要件に加えてe-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことが必要)を受けることができますし、3年間赤字を繰り越すことができる、家族に支払った給与が適正水準であれば経費にすることができるなど、さまざまな特典が設けられているので、上手に活用すれば大きく税額を軽減させることができるからです。
▶ 青色申告のメリット|65万円の控除を受けるための要件は?
なお、この青色申告をするためには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に届出ることが必要です。
また、家族を青色事業専従者にして給与を支払うためには「青色事業者専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
必要な届出などについては、事前に税理士に相談してアドバイスを受けるとよいでしょう。
▶ 所得税の青色申告承認申請書とは?書き方・提出先・期限【まとめ】
アパートや賃貸住宅、駐車場などの不動産オーナーとして、賃料収入を得ている人は「不動産所得」の申告が必要です。
不動産所得は、1年間に得た家賃収入や更新料などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
なお、敷金や保証金など将来返済する預り金としての性質を持つものは、収入に含めません。
なお、不動産所得で赤字になった場合には、ほかの給与所得や事業所得と損益通算することもできます。
株式の売買をして利益が出た場合で、「特定口座・源泉徴収あり」を選択していない人、ビットコインなど仮想通貨の売買で利益が出て一定の要件に該当する人は、確定申告が必要です。
不動産を売却した時には、「譲渡所得」の確定申告が必要です。納税額は他の所得と分けて計算され、所有期間が5年超か5年以下かによって計算方法が異なります。
短期譲渡所得
※所得税には、別途復興特別所得税が課税されます。 |
なお、不動産のなかでもマイホームを売却した時には、①3,000万円の特別控除、②軽減税率の特例、③買換特例、④マイホームの譲渡損失の特例などの適用を受けられる場合があります。
株の売買による儲けは、譲渡益として所得税がかかります。
証券会社の口座には「一般口座」「特定口座」の2種類があり、特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分かれます。
確定申告が必要なのは、一般口座と「特定口座・源泉徴収なし」の場合です。
ただし、サラリーマンなど会社で年末調整を受けている人の場合には、給与所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
なお、株を売買して損失が出た場合には、損益通算と繰越控除で所得税額を軽減させることができます。損益通算と繰越控除の適用を受ける場合には、必ず確定申告が必要です。
仮想通貨は、売却・商品購入・仮想通貨同士での交換、マイニング(採掘)と呼ばれる方法で取得した場合に所得税の対象となり、雑所得として総合課税の対象となります。
仮想通貨を持っているだけなら、確定申告は必要ありませんが、仮想通貨を売却して年間20万円超の利益が出た場合には、個人事業主はもちろんサラリーマンで年末調整を済ませている人でも確定申告が必要です。
確定申告の豆知識
確定申告とは、正しい所得と税金を計算して報告する手続きです。
申告期限を過ぎたり申告しなかったりすると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられることもありますので、期限内に申告するようにしましょう。
なお、税金が戻ってくる「還付申告」は、確定申告期間と関係なく該当する年の1月1日から5年間可能です。今からでも、過去分の還付を受けることができるので、あきらめずに申告をしましょう。
以上、確定申告をしなければならない確定申告の対象者や、確定申告をすることでお得になるケースについてご紹介しました。
確定申告をしなければならないのに確定申告をしないでいると、加算税や延滞税といった追徴税が課される可能性があります。
自分が確定申告をしなければならないのか分からない場合には、早めに税理士に相談しましょう。
確定申告の期間は1カ月程度に限られているので、早めに準備を開始しましょう。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
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監修者
アトラス総合事務所
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所得税は「申告納税制度」といい、1年間で生じた所得をもとに自分で所得金額と税額を計算し、申告納付する制度を採用しています。確定申告が必要な人は、給与を2カ所以上からもらっている人や給与収入が2,000万円を超えている人、個人事業主で納付税額がある人などで、確定申告をしなかったり申告期限が遅れたりすると、加算税や延滞税といったペナルティを課せられることもありますので、注意が必要です。
また、確定申告をすると税金が還ってくる人もいます。たとえば、多額の医療費を支払った人が受けられる医療費控除などは、サラリーマンの年末調整の対象とはならないため、自分で還付申告をすれば払い過ぎた税金が戻ってきます。
納め過ぎた税金が戻ってくるケースは意外に多いので、忘れずに申告をするようにしましょう。
確定申告を行う前には、申告に関係する証明書、売買契約書などを準備しておきましょう。医療費控除であれば、医療費の領収書を保管しておく必要がありますし、住宅ローン控除に必要な借入金の年末残高等証明書、保険料控除に必要な保険料控除証明書など郵送されてくるものについても、きちんと保管しておきましょう。
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