公開日:2022年10月27日
最終更新日:2024年03月31日
無形固定資産とは、形はないけれど、企業活動の収益を得る要因となり得るもので、法律上の権利や契約によって与えられる権利や資産をいいます。
無形固定資産は、税務上それぞれの耐用年数が定められていて、定額法で償却します。
無形固定資産の豆知識
固定資産は、①有形固定資産、②無形固定資産、③投資その他の資産に大きく分類されます。
①有形固定資産:土地、建物、機械装置など
②無形固定資産:特許権、のれん、ソフトウェアなど
③投資その他の資産:投資有価証券、子会社株式、長期貸付金などがあります。
無形固定資産とは、形のない固定資産のことで、形はなくても有形固定資産と同じように減価償却を行います。無形固定資産のうち、ソフトウェアは購入によって取得するもの、販売する目的で研究開発するものがあります。自社で研究開発するソフトウェアは、最初に製品化される製品マスターが完成するまでに支出される費用は研究開発費、その後の制作に係る費用はソフトウェアとして資産に計上されます。ソフトウェアを購入したり製作したりしたときは、資産の増加である借方、減価償却したときは資産の減少である貸方に記載します。
特許権も、無形固定資産です。特許権が増加したときは借方に、減少したときは貸方に計上します。特許権が増加するのは取得したときで、他社から購入した場合は、購入対価と付随費用の合計が特許権の取得価額になります。一方、自社内で発明した場合は、その発明にかかった研究開発費や付随費用などのうち、資産計上されたものは特許権の取得価額です。
ソフトウェアも特許権も耐用年数にわたって償却します。特許権の償却年数は8年、ソフトウェアの償却年数は5年です。
無形固定資産とは、のれん、特許権、ソフトウェアなど、形は存在しないけれど、「企業活動を行う上で収益獲得の要因となり得るもの」をいいます。
無形固定資産は、「時の経過とともに、その資産価値は減少する」と考え、耐用年数にわたって減価償却をします。
固定資産は、①有形固定資産、②無形固定資産、③投資その他の資産の3つに分けられます。
②の無形固定資産が、形が存在しないものであるのに対して、①の有形固定資産は、形が存在する資産で、固定資産のうち建物、構築物、機械装置、車両運搬具などが、この有形固定資産に該当します。
有形固定資産も減価償却費によって費用化しますが、土地、建設仮勘定は非減価償却資産です。
また、有形固定資産として処理するのは耐用年数が1年以上で、取得価額が10万円以上のものです。取得価額が10万円未満の有形固定資産は、事業用に使用した時点で費用として処理をします。
なお、③の投資その他の資産とは、企業の経営支配、取引関係の維持などを目的として保有する資産で、投資有価証券や出資金、長期貸付金などが該当します。
固定資産 | 有形固定資産 | 建物、構築物、機械装備、車両運搬具、土地など |
無形固定資産 | 特許権、借地権、のれん、ソフトウェアなど | |
投資その他の資産 | 投資有価証券、子会社株式、長期貸付金、出資金、差入保証金、長期前払費用など |
無形固定資産は、大きく①法律上の諸権利、②契約で与えられる権利、③収益力資産の3つに区分されます。
区分 | 該当する無形固定資産 |
①法律上の諸権利 | 特許権、実用新案権、商標権、意匠権など |
②契約で与えられる権利 | 電話加入権、電気ガス供給施設利用権、鉱業用施設利用権など |
③収益力資産 | のれん、営業権 |
無形固定資産は、有形固定資産と同じように取得に要した費用をもって、取得価額とします。そして、有形固定資産と同じように時の経過とともに資産価値が減少すると考え、耐用年数に応じて減価償却します。なお、減価償却の方法は、定額法によることとされていますが、鉱業権については生産高比例法も認められます。
定額法とは、以下の計算式で計算した金額を、各事業年度の償却限度額とする方法です。減価償却費の額が、原則として毎年同額となります。
定額法の償却限度額 = 取得価額 × 定額法の償却率 |
償却率は、資産が価値を持つと考えられる年数(耐用年数)に基づいて、算出されます。
参照:国税庁「減価償却資産の償却率表」
なお、貸借対照表価額は、取得価額から減価償却累計額を直接控除した額です。
無形固定資産は、税務上それぞれの償却年数が定められています。
なお、電話加入権と借地権については、減価償却は認められません。
無形固定資産の名称 | 耐用年数 |
特許権 | 8年 |
商標権 | 10年 |
実用新案権 | 5年 |
意匠権 | 7年 |
漁業権 | 10年 |
ソフトウェア 複写して販売するための原本 |
3年 |
ソフトウェア その他のもの |
5年 |
営業権(のれん) | 5年 |
借地権 | 非償却 |
電話加入権 | 非償却 |
鉱業権 | ※ |
※鉱業権は、採掘予定数量を適正に推計される年間採掘数量で除して計算した数を基礎とし、納税地の所轄税務署長が認定した年数となります。
特許権とは、特許権者が特許法に基づいて登録することによって与えられる権利で、新規で創造性のある発明の独占的・排他的実施権利であり、工業所有権のひとつです。
特許権が他の者の所有であり、実施権または使用権を取得した場合にも同様に扱われます。
法人税法による減価償却の方法は、定額法、残存価額ゼロで、耐用年数は8年です。
特許権を有償取得した場合には、取得時の支出額で評価されます。
出願料や特許料、登録免許税など登録に要する費用は、以下のとおり処理をします。
①自己が発明した特許に関するもの:「支払手数料」(登録免許税は「租税公課」)、または取得価額のいずれか選択可
②他から購入した特許に関するもの:取得価額
「当事業年度(4月1日~翌3月31日)の10月に特許権を1,500万円で取得した。期末償却を行った。」
1,500万円×0.125(定額法8年の償却率)×6/12=937,500 |
商標権とは、自己が提供した商品や役務の出所を明示するために使用する文字、図形、記号、立体的形状など(商標)について、商標法に基づいて登録した場合に得られる権利で、商標を独占的・排他的に使用する権利をいいます。
商標権の耐用年数は10年で、残存価額(耐用年数が過ぎた後の価額)はゼロの定額法によって均等償却されます。
登録費用については、資産計上することも、費用処理することもできます。
意匠権とは、形状、模様、色彩などのデザインについて、特許庁の登録により与えられる独占的・排他的な権利をいいます。
意匠法上の権利期間は出願から25年で、税務上の耐用年数は7年です。
実用新案権とは、特許権同様に自然法則を利用した技術的思想に基づく創作であり、物品の形状、構造等の空間的な形態で具象化したものをいいます。特許権の方が技術的に高度なものであり、特許権の場合には技術的思想の創作も対象とされます。
実用新案権の耐用年数は、5年です。
ソフトウェアとは、コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラムです。
自社利用のソフトウェアは、将来の収益獲得または費用削減が確実であることが認められる場合には、無形固定資産に計上します。たとえば、販売管理システムや会計ソフトの導入に要した支出などが該当します。
収益獲得または費用削減が確実かどうか不明である場合は、費用処理をします。
自社利用目的のソフトウェアは、一般的には定額法により、耐用年数は、ソフトウェアの利用可能期間ですが、実務上は税務に合わせて5年です。
「自社利用の会計ソフトを200万で導入し、5年で償却する。」
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 400,000 | ソフトウェア | 400,000 |
税務上の営業権は、通称のれんと呼び、一般的にその企業の永年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術または特殊な取引関係の存在などの独占性等を総合したものをいいます。
たとえば、事業の譲受けや合併、会社分割、株式交換などで有償取得したものです。
税務上は、営業権の償却年数は5年です。なお、自社でつくり上げた超過収益力を「自己創設のれん」と呼びますが、自己創設のれんの資産計上は認められません。これは、取得原価の算定に恣意性が介入するリスクがあるためです。
無形固定資産とは、商標権、のれん、ソフトウェアなど具体的な形のない資産で、長期間にわたり経営に利用される資産であり、形はないものの、経済的な収益力で、法律で認められた特別な価値のある権利をいいます。
耐用年数は個々に規定されており、その使用可能な期間にわたって減価償却します。
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監修者
アトラス総合事務所
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法律上の権利を示す特許権や経済的価値を持つソフトウェアなどのように、その使用によって企業が将来便益を獲得できる資産を「無形固定資産」といいます。無形固定資産は、その使用によって便益を獲得しますから、無形固定資産を取得するための支出を、その資産によって得られる収益と対応させる必要があります。そのため、減価償却手続きが行われます。減価償却の方法には、定額法・定率法・生産高比例法などがありますが、償却法としては定額法と定率法が一般的であり、無形固定資産は、原則として定額法を用いて各会計期間に費用として配分されます。
取得価額が10万円未満の資産などは、少額減価償却資産として事業に使った年度の費用として、全額損金に算入することができます。また、税務上の特別な償却方法として、取得価額を特別に損金算入できる場合があり、上手に活用すると節税効果が期待できます。
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