公開日:2019年11月01日
最終更新日:2024年02月07日
会社が住宅を借りて、その住宅を社長などの役員や従業員に社宅として貸し付けた場合、支払った賃料と受け取った賃料の差額を、会社の損金とすることができるので、節税効果があります。
社宅を利用とした節税対策は、会社にとっても従業員にとってもメリットのある方法なので、積極的に活用することを検討しましょう。
社宅の豆知識
会社が住宅を借りて、その住宅を役員または従業員に貸し付けることで社宅にすることができます。社宅制度を採用する場合には、社内規程を策定する必要があります。また、入居者から受け取る金額が少なすぎると、給与として課税されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
税務署に否認されない賃料のラインや必要な社内規程については、税理士に相談し税務署にチェックされないようにしましょう。
税理士には、申告業務や経理業務のみ依頼しているケースもありますが、中長期的に最も効果のある節税対策を提案してもらうこともできます。まずは税理士に相談して、会社の要望を伝えてみましょう。
社宅というと、大企業の制度とイメージする人もいますが、たとえば社長1人従業員1人というような小さな会社でも、会社が住宅を借りてその住宅を社長や従業員に貸し付けることで社宅とすることができます。
社宅を活用する際には、まず会社が賃貸物件を借りて貸主に賃料を支払い「地代家賃等」として経費にします。そして、入居者である社長や従業員から受取賃貸料として一定の賃料を受け取ります。
会社が支払った賃料と、役員や従業員から受け取った賃料の差額を会社の経費とすることができます。
社宅制度を導入すれば役員や従業員の家賃負担を抑えることができるうえ、社宅を購入した場合には、その建物について減価償却費を計上することができます。また従業員にとっても、福利厚生の面でメリットがあります。
社宅に関連する費用は、基本的に会社の経費とすることができます。ただし、社宅を役員や従業員に無償または低い家賃で貸与していると、その賃貸料相当額または賃貸料相当額と実際に徴収している家賃の差額に相当する金額が、現物給与として課税されることがありますので、注意が必要です。社宅制度を導入して経費にする場合に、最も問題となるのが、この入居者から受け取る賃料の額といえるでしょう。
税務署に必ず認めてもらえるラインという意味でいえば賃料の50%程度ということになりますが、これではあまりメリットがありません。計算方法は「住宅の種類」「役員か従業員か」によって異なりますが、まずはおおよそ賃料の10%~20%程度を目安と考えておきましょう。(※後述)
法人が社宅を購入した場合には、その建物について減価償却費を計上することができます。仮に社長が個人で自宅を購入したとしても、減価償却費を計上することはできません。これは、法人だからこそできる節税対策といえるでしょう。
法人が社宅を購入した場合に、購入資金を借入れによって調達していれば、その利子も損金になります。なお、従業員の社宅として使用する場合には、現物給与として課税されない賃貸料相当額は、通常の不動産賃貸を行う場合の賃貸料よりも低額であるため、あまり益金を計上せずに、減価償却費や借入金利息を損金に算入し節税することができます。
会社が住宅を購入したり借りたりして、その住宅を役員に社宅として貸与することで、会社の経費とすることができます。また建物について減価償却費を計上することができます。
①会社が住宅を購入した場合は減価償却費が計上できる
会社が住宅を購入して社長に貸し付けた場合、その住宅は会社の資産として計上されて、建物について毎年減価償却をすることができます。
※減価償却とは、購入代金を一度に費用として計上するのではなく、その価値の減少を資産の金額に反映(償却)していくことです。
建物、車両、パソコン、機械など、ある程度高額な固定資産を買った時には、その費用を何年かに分けて経費にしていきます。
また、減価償却費だけでなく固定資産税や維持費も経費とすることができます。社長個人で住宅を購入しても会社の経費とすることはできませんので、法人ならではの節税メリットを生かすことができます。
②会社が住宅を借りる場合も社宅にできる
会社が住宅を購入せずに借りる場合でも、社長や社員にその住宅を貸して「借り上げ住宅」とすることができます。この場合、会社が負担した家賃は会社の経費にできます。
ただし、社長がすでに個人で購入した住宅を会社が借り上げてさらに社長に貸し付ける場合には、メリットはありません。
役員だからと言って無償またはあまりに低い家賃で貸し出すと、その賃貸料相当額または賃貸料相当額と実際に徴収している家賃との差額に相当する金額が、給与としてみなされ、課税されてしまいますので注意が必要です。
定められた金額以上の家賃を社長個人が負担しないと、家賃負担全額が給与として課税されてしまいます。したがって、賃借料の一部は、かならず社長個人が負担するようにしてください。
役員に貸与する社宅でも、豪華なものは社宅とは認められません。また、小規模な住宅でない場合には受領すべき家賃の計算方法が変わりますので、注意が必要です。
小規模住宅の場合 小規模宅地とは、建物の耐用年数が30年以下の場合には、家屋の床面積が132㎡以下、建物の耐用年数が30年超の時は家屋の床面積が99㎡以下のもの 次の①から③までの合計額が賃貸料相当額になります。 豪華な住宅の場合 |
税理士の豆知識
顧問税理士にどこまでの業務を依頼するかは、会社の状況によって異なります。小規模な企業で多いのは、日々の記帳作業は自社で行い、必要に応じて税理士にレビューを依頼し、税務申告を税理士に依頼するケースです。自社で記帳作業を行なえば、ビジネスの全体像を把握しタイムリーに経営状況を把握できるというメリットがありますし、税理士にレビューを依頼すれば、専門家として正しい処理をしてもらうことができ、資金繰りや有益な節税対策についてアドバイスをしてもらうことができるからです。
なお税務申告は、専門的な知識が不可欠となりますので、自力で調べながら申告するのはかなり大変です。間違った申告をすれば税務署から連絡がくることもあります。また、税務調査の対象となってしまうこともあります。
このような労力を割くくらいなら、専門的な知識が必要となる業務は税理士に依頼し、本業の経営に注力した方がメリットは大きいといえるでしょう。
賃貸物件を会社で借りて所有者に家賃を支払う場合、会社が家賃の一部を負担することで、従業員の家賃負担を抑えることができ会社としても家賃を損金に算入することができます。節税というメリットだけでなく、福利厚生の充実や従業員の定着率の向上など、一石二鳥の効果が期待できます。
従業員にとっては家賃の負担が少なくなり、手取り収入が増えるというメリットがあります。
たとえば、家賃が月10万円の部屋を借りて社宅として、従業員から3万円家賃を受領してその分従業員の給与を7万円下げたとします。
この場合、従業員の給与は7万円減りますが10万円の部屋に3万円で住むことができるので家賃負担は7万円下がることになります。
こうしてみると、一見従業員には何のメリットがないように見えますが、給与が7万円下がれば所得税・住民税・社会保険料が下がりますので、結果として従業員の手取りが増えることになります。
なお、住宅手当として住宅費を給与に上乗せして支給する方法もありますが、住宅手当は給与の一部とみなされるので、所得税や社会保険料が上がってしまうというデメリットがあります。
社宅の費用は会社の経費となります。
たとえば、前述した家賃が月10万円の部屋を借りて社宅として、従業員から3万円家賃を受領したケースでいえば、負担する家賃10万円が損金となり従業員から受け取る3万円は益金となります。その差額の7万円が経費として計上できるわけです。
従業員の給与を7万円下げたことで、給与としての経費は7万円減少するので、トータルで見れば会社負担に変更はありません。つまり、会社の負担を増やさずに従業員の手取りを増やすことができるということです。また、住宅手当の支給と違って給与に含まれないことから、会社負担の社会保険料も増えません。
従業員の社宅家賃の計算方法は、固定資産税の課税標準額が分かる場合と、固定資産税の課税標準額が分からない場合とで、計算方法が異なります。
①固定資産税の課税標準額が分かる場合 次の①から③の合計額で計算します。 ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント ②固定資産税の課税標準額が分からない場合 |
なお、固定資産税標準額は、固定資産税の納税通知書に記載してあります。この通知書は納税者である家主宛に送付されるので、賃借人は知ることができませんが、市区町村の固定資産税課に賃貸契約書を持参すれば、課税標準額を閲覧することができます。
これまでご紹介したように、従業員からは必ず一定額以上の家賃を従業員から受け取らなくてはいけません。
また、住宅手当を支給した場合や入居者が直接契約している物件の家賃負担は、社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
ただし、看護師や守衛などのように、仕事をするうえで勤務先から遠い場所に住むことが困難な従業員に社宅や寮を貸与する場合には、「仕事に従事させる都合上やむを得ない」として、無償で貸与しても課税されないケースもあります。
社宅制度を利用する場合には、入退去の要件・手続き、光熱費などの費用負担について明確にして、社宅規程を策定する必要があります。
社宅として借りている部屋に、複数の従業員が共同生活をしている場合には、各人がどれだけ使っているかわかりませんので、その全額を会社が負担しても問題はありません。
もし各人ごとの使用料が明確な場合には、それぞれが自己負担しなければなりません。
また、駐車場は家賃とは別に従業員の全額負担になります。もし会社が駐車場を負担していると、その駐車場代は従業員の給与に加算されることになります(ただし駐車場代がマンションの管理費に含まれている場合には家賃に含むことができます)。
社内規程を策定して、その内容を従業員によく説明をしておかないと、後で思わぬトラブルに発展することもあります。税理士などと相談しながら自社に合ったカスタマイズを行いましょう。
以上、社宅を経費にして節税する方法についてご紹介しました。
会社負担の家賃相当額を給与から減額することで、会社の社会保険料の負担が減り、役員や従業員個人にとっても所得税、住民税、社会保険料の負担が減って手取りが増えるなどのメリットがあります。
ただし、一定の金額は個人が負担しないと全額が給与課税されてしまうので、その点について注意するようにしましょう。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、社宅を活用して節税する方法や、社宅規程の策定などについてサポートをしてくれる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修者
アトラス総合事務所
会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!
節税というと、「どうせ税金で取られるくらいなら、経費を少しでも多く使ってしまおう」と考える人がいますが、これは単なるムダ遣いであり節税ではありません。
効果的な節税対策を行うために大切なのは、日頃から節税意識を持ち、タイミングよく、かつ中長期的に有効な対策を講じることです。
社宅を利用した節税対策は、一定の条件を満たす必要がありますが、長期的に有効な対策であり、会社にとっても従業員にとっても大きなメリットのある方法です。
なお、節税対策は、ここでご紹介した社宅を利用した節税対策以外にも、減価償却を利用した節税対策や、福利厚生を利用した節税対策、生命保険を活用した節税対策など、さまざまなものがあります。
アトラス総合事務所では、個々のご事情にあわせた最適な節税対策のご提案を行います。また、効果的な節税対策を行うために必要な正確なデータを作成するための経理システムの構築についても、サポートしております。
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