個人事業主の青色申告決算書とは(収支内訳書との違い)

公開日:2019年12月25日
最終更新日:2024年01月30日

この記事のポイント

  • 青色申告決算書とは、確定申告を青色申告で行う際に必要となる書類。
  • 白色申告の時に必要となるのは、「収支内訳書」。
  • 青色申告の方がさまざまな税制上の特典があり、税負担を軽減させることができる。

 

個人事業主は、基本的に確定申告をしなければなりません。
確定申告とは所得税を納めるために必要な手続きで、個人事業主の場合は、サラリーマンと違って自分で税額を計算して納税手続きを行います。
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告決算書とは、青色申告を行なう時に確定申告書と一緒に提出をする書類です。
 

青色申告決算書の豆知識

青色申告決算書とは、青色申告をする場合に確定申告書とともに提出するものです。白色申告をする場合には青色申告決算書ではなく収支内訳書を提出します。
青色申告決算書や収支内訳書では、総収入金額から経費を差し引いた金額を所得金額として記入します。
個人事業主が自宅を仕事場として利用している場合には、家賃、水道光熱費、通信費、自動車関連費などの一部を経費として計上することができますので節税につながります(家事按分といいます)。
青色申告は、青色申告特別控除が認められたり家族への給与を経費にできたりといった多くのメリットがありますので、個人事業主やフリーランスの人の確定申告は、ぜひ青色申告で行いましょう。
個人事業主やフリーランスの節税対策としては、青色申告のほかにも、小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入もおすすめです。また、確定申告では所得控除や税額控除を活用することも大切です。
また、事業が成長して所得が増えてきたら、会社をつくった方が節税につながることもあります。
個人事業主として節税対策をした方がよいのか、会社を設立した方がメリットが大きいのか判断が難しい場合には、税理士に相談して税額シミュレーションをしてもらってはいかがでしょうか。

青色申告決算書とは

青色申告決算書とは、確定申告を青色申告で行う際に必要となる書類です。
開業届を提出している個人事業主が確定申告をする際には、青色申告と白色申告のどちらかを選択することができます。

青色申告とは
事業を行っている人であれば、できるだけ収入を多くして納める税金は少なくしたいと思うのは当然です。納める税金を少なくする節税対策の第一歩が「青色申告」です。
青色申告の場合、白色申告では認められない支出を必要経費とすることができるなど、さまざまな特典があります。

青色申告のメリットはたくさんあり、細かいものも含めれば50以上あると言われていますので、確定申告は断然青色申告で行うのがオススメです。

(1)青色申告決算書と収支内訳書との違い

前述したとおり、確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告の時に必要となるのが「青色申告決算書」で、白色申告の時に必要となるのが「収支内訳書」です。
どちらも収入や売上原価、経費の内訳などを記載するものですが、収支内訳書は青色申告決算書と比較すると、記載する項目も少なく簡単に作成することができます。

収支内訳書

※収支内訳書は、令和5年分からインボイス制度開始に伴い、登録番号の記入欄が新たに設けられ、全体のレイアウトが変更されます。

青色申告決算書

※青色申告決算書は、令和5年分から3ページ目にあった「地代家賃の内訳」が2ページ目に移動し、3ページ目には「売上(収入)金額の明細」と「仕入金額の明細」という記入欄が増え、主要取引名の名前や取引額を記入することになります。
また、インボイス制度開始に伴い、取引先の登録番号の記入欄が新たに設けられます。

(2)青色申告決算書の入手方法

青色申告決算書は、その年度の11月~12月上旬ころ、確定申告書は1月中旬頃に税務署から郵送されてきますが、税務署で入手することもできますし国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
個人事業主は事業所得なので「一般用」を使用します。

(3)青色申告決算書は4ページある

青色申告決算書は4ページ構成になっています。
1ページ目は損益計算書、2ページ目、3ページ目が損益計算書の内訳、4ページ目は貸借対照表です。
損益計算書には、収入、経費、利益の3つが記載されています。この1年間、収入を得るために、何にどれくらいの経費を使って、どれくらいの利益(または損失)を生み出したかが分かる構成になっていて、個人事業の1年間の成績表のようなものです。

4ページ目の貸借対照表は、決算時点の財政状況をあらわす書類です。どのようにお金を調達したのか(負債、資本)、そしてその資金で行われた事業活動の結果が分かるようになっています。期首(年の初め)と期末(年の終わり)の金額も記載されていますので、その変化を把握することもできます。

(4)会計ソフトなら自動作成できる

青色申告の方が、さまざまな税制上の特典があり、これらの特典を常時に利用すれば、かなり税負担を軽減させることができます。
したがって、個人事業主など毎年継続して確定申告を行なう人は青色申告をした方が、節税対策になります。

青色申告では、複式簿記形式で帳簿を作成し、青色申告決算書を完成させて確定申告をしなければなりませんが、「クラウド会計ソフト freee会計」を使えば難解な複式簿記の帳簿作成もスムーズに行うことができます。
さらに、ネットバンキングやクレジットカードと連携させれば、日々の記帳作業はほぼ自動化させることができ、青色申告決算書や確定申告書も簡単に作成することができますので、ぜひ挑戦してみてください。

▶ クラウド会計ソフト freee会計「青色申告決算書とは」

(5)確定申告書の改正ポイント

青色申告決算書が完成したら、納める税額を計算するために確定申告書を作成します。
確定申告書についても、令和6年(令和5年分)から申告書第二表の記入欄が、一部変更される予定です。
1つ目の変更点は、「配偶者や親族に関する事項」の「国外住居」の記入欄です。これは、令和5年から海外の親族に関する扶養の条件が厳しくなったためです。
2つ目の変更点は、住民税の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の記入欄がなくなりました。

提出期限は原則として2月16日から3月15日(土日の関係で、1~2日ずれる場合があります)です。提出が1日でも遅れると、青色申告特別控除額が減ってしまいますので、注意しましょう。

青色申告決算書の記載ポイント

青色申告決算書は、4ページで構成されています。
すべての欄に記載する必要はなく、当てはまる部分だけ書けばよいことになっています。
2ページ目、3ページ目から書き始め、その作成が終わったら1ページ目の損益計算書に転記し、最後に4ページ目の貸借対照表に進むと、記載しやすいです。
なお、ここでは国税庁の「令和5年分の所得税等の確定申告書(案)」をもとに解説をしていますが、この案は今後変更する場合があります。

参照:国税庁「令和5年分の所得税等の確定申告書(案)」

(1)青色申告決算書①「損益計算書」

青色申告決算書1ページ目「損益計算書」

1ページは損益計算書です。
1年間の所得金額の集計のための一覧表です。
売上高(本業で獲得した収益)、経費などが分かるようになっています。

①事業者の住所、氏名、連絡先など
税務署から送付される場合には、事業を行っている住所や事業を行っている人の氏名が印字されています。
誤りがないか、内容を確認しましょう。

②売上金額・売上原価
売上に関する数字です。「売上(収入)金額」は、一年間の総収入であり、2ページ目「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「売上(収入)金額」の計の金額を記載します。
「仕入金額」は「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「仕入金額」の計の金額を記載します。

③経費
経費を記載します。
勘定科目の名前が書かれていますので、決算整理後の経費を勘定科目ごとに転記します。
減価償却費については、3ページ目「減価償却費の計算」の「(リ)本年分の必要経費算入額」の計の金額を記載します。

④各種引当金・準備金等
繰戻額等の「貸倒引当金」の部分には、前年に計上して今年回収した貸倒引当金の額を記載します。
貸倒引当金とは、取り立てができないなど将来の損失を見込んで経費として計上するものです。
繰入額等の「貸倒引当金」の部分には、2ページ目「貸倒引当金繰入額の計算」で計算した、今年新たに計上する貸倒引当金の額を記載します。
「専従者給与」には、事前に届出を出した事業専従者に支払った給与を記載します。

⑤青色申告特別控除額
複式簿記で帳簿を作成した方は、「青色申告特別控除額」に65万円(※令和2年分より、今までの65万円の青色申告特別控除の適用要件に加えてe-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことが必要)と記載します。

(2)青色申告決算書②「月ごとの売上・仕入など」

青色申告決算書2ページ目「損益計算書の内訳(売上・仕入など)」

2ページ目は、損益計算書に記載する金額のうち、「売上」「仕入」「給料賃金」「専従者給与」「青色申告特別控除」「貸倒引当金」の項目の内訳を記載します。

① 月別売上(収入)金額及び仕入金額
月別の売上金額と仕入金額を記載します。それぞれの合計額は、1ページ目の「売上(収入)金額」と「仕入金額」の欄に記載することになります。

②貸倒引当金繰入額の計算
貸倒引当金に計上した金額を計算します。合計額は1ページ目の繰入額等の「貸倒引当金」に記載します。

③給与賃金の内訳
従業員がいる場合には給与の詳細を書きます。記載するのは、月々の給与の合計と賞与、源泉徴収額です。
合計値は、1ページ目の「給料賃金」に記載します。

④専従者給与の内訳
通常の従業員とは分けて、青色事業専従者(家族)の給与をここに記載します。1ページ目の「専従者給与」にも記載します。
※青色事業専従者の給与を経費に算入するには、事前に届出が必要です。

⑤地代家賃の内訳
家賃や駐車場料金などについて記載します。プライベートと兼用の場合は按分割合を明記します。
※従来3ページ目にあった地代家賃の内訳は、2ページ目に移動しました。

⑥青色申告特別控除額の計算
65万円控除を受ける場合は、「青色申告特別控除額」の欄に65万円と記載します。

(3)青色申告決算書③「減価償却費、地代など」

青色申告決算書3ージ目「損益計算書の内訳(減価償却費、地代など)」

3ページ目は、2ページ目と同様に損益計算書の内訳となります。
「減価償却費」「税理士報酬等」「特殊事情」の項目の内訳を記載します。

①売上(収入)金額の明細
売上(収入)金額の明細を記載します。
※令和5年分から新設されました。

②仕入金額の明細
仕入金額の明細を記載します。
※令和5年分から新設されました。

③減価償却費の計算
減価償却の計算の詳細を記載します。
定額法の場合は、取得価額と同じ額を記載します。

④利子割引料の内訳
知人や会社からの借入金等があれば、その内容と利子を記載します。
金融機関からの借入れや車のローンは記載しません。

⑤税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
税理士や弁護士に支払った報酬を記載します。
顧問料などの支払いがあった場合には、報酬、料金、源泉徴収税額を記載します。

(4)青色申告決算書④「貸借対照表」

青色申告決算書4ージ目「貸借対照表」

4ページ目は、貸借対照表です。期首(1月1日もしくは事業開始日)および期末(12月31日もしくは廃業日)の財産の内訳を記載します。

①資産の部
この欄は資産の部といい、自分の事業の資産の状況を記載します。
現金や預金、固定資産、売掛金など、決算時に個人事業主が持つ資産が記載します。原則として現金化しやすい順に並びます。
「棚卸資産」が1ページ目「売上原価」の「期末商品(製品)棚卸高」と対応しているかを確認しておきましょう。

②負債・資本の部
事業を行うために、どのような方法でいくらお金を調達したかが記載されます。よそから借りてくれば「負債」、自己資金なら「資本(元入金)」です。
買掛金など支払義務があってまだ支払っていないお金も記載します。

「資産の部」(左側)と「負債・資本の部」(右側)の合計は必ず一致させます。
一致しない場合は、差額を「事業主貸」あるいは「事業主借」と処理して一致させます。

③製造原価の計算
製造業の場合だけ、この欄を使います。
原材料を仕入れ、加工して販売する製造業では、原価計算を行わなければなりません。

まとめ

以上、青色申告決算書についてご紹介しました。
青色申告決算書は、1年間の収支をとりまとめ、償却資産の耐用年数を確認しなければならないなど、面倒な作業が多くありますが、「クラウド会計ソフト freee会計」なら、面倒な1年分の経費の入力も、銀行口座やクレジットカードを同期すれば自動で入力できるうえに、青色申告決算書もほぼ自動で作成することができます。不明点等は、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」を活用して、税理士に相談することもできます。

法人成りで節税できる?

事業が成長して売上も利益も伸びてきたら、会社を設立した方が節税効果が高くなります。
まずは、税率の違いです。
個人事業主の所得税は、課税される利益が多くなるほど税率が高くなります。
一方、会社の所得に対して課税される法人税は、基本的に定率の税率を採用しています。
具体的には、株式会社などの普通法人は、所得に対して23.2%(資本金が1億円以下の中小法人は、年間800万円の所得部分については15%)となっています。

また、個人事業主は収入から必要経費を差し引いた金額が事業所得となり、この事業所得から青色申告特別控除(最大65万円)を差し引いて、課税所得を計算します。
一方、法人成りをして会社を設立した場合、個人事業主は社長となり会社から給与を受け取ることになります。

つまり、個人事業主が1人会社を設立することで、個人事業主の所得は「会社の所得」と「給与所得(社長の役員報酬分)」の2つの課税単位に分かれることになります。

たとえば、個人事業で収入が1,000万円、必要経費が400万円、所得が600万円のケースでは、所得税、住民税、事業税の合計で納税額は約120万円です。

一方、会社を設立して収入が1,000万円、必要経費が400万円、役員報酬が600万円のケースでは、法人税等と社長個人の給与の税金を合わせて約82万円です。

つまり、会社を設立した方が「120万円-82万円=38万円」も税金が少なくなるわけです。

個人事業のままでいくか、会社を設立した方が良いかは、個々の事情によります。税金面で見た場合には、おおよその目安としては個人事業の所得金額が400万円前後になったら、会社設立を視野に入れ税理士に相談することをおすすめします。
 

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法人化するか悩んでいる方は、ぜひお試しください!

 

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

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この記事の監修者:アトラス総合事務所

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アトラス総合事務所

会計・税務・労務・法務の専門家集団が、会社・個人事業をトータルでサポートいたします!

個人事業主の所得税は、1年間の利益を確定してから税務署に申告します。つまり、自分で税額を計算して確定して税務署に申告し、納税しなければなりません。個人事業主の確定申告には、白色申告と青色申告があり、青色申告では、複式簿記で帳簿づけを行い、青色申告決算書を作成する必要がありますが、青色申告の方が節税につながる特例が多く設けられているので、ぜひ青色申告を選択しましょう。
青色申告は、白色申告よりある程度の手間はかかりますが、その手間をはるかに上回るメリットが、青色申告にはあります。
さらに「クラウド会計ソフト freee会計」を活用すれば、白色申告も青色申告も手間はそれほど変わらなくなります。またクラウド会計ソフト freee会計では、税理士と同時に同じデータを見ながら打ち合わせすることができますので、問題があればすぐに指摘してもらうこともできますし、タイムリーな節税対策の提案を受けることも可能となります。
アトラス総合事務所は、「常にお客様のために最善を尽くす」をモットーに、個人事業主の皆様の確定申告はもちろん、会計ソフトの導入支援から活用、経理の自計化、節税対策、融資のご相談など幅広くサポートを行っております。

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